陶芸家紹介/太田富夫

会館館長による作家リポート。陶芸の里で作陶に励むみなさんの素顔に迫ります。
第3回 備前焼作家 太田富夫・・・平成24年1月

土と焼きの面白さを伝えるのが僕の使命
備前焼作家 太田富夫

さやの中に入れて、強還元で焼いた青備前の抹茶碗と徳利。

さやの中に入れて、強還元で焼いた青備前の抹茶碗と徳利

「備前焼の醍醐味というのは土の面白さにあると思うんですよ。その土を、いろんな焼き方で示して、土と焼きのおもしろさを皆さんに伝えるのが僕の使命だと思っています」

そんなふうに話すのは、若宮窯の主、太田富夫さん。窯のそばに建つ「ギャラリー若宮」では自身の作品のほか、ご長男・雅之さんや弟子の荻野雅也さんの作品を展示即売。一般の人を対象に備前焼の作陶指導も行っている。

昭和24年、邑久町大富の生まれ。実家は兼業農家だったが、備前焼の収集に熱中する父親の姿を見て育つうち陶芸に興味をもった

「父は、給料日になると4~5人の仲間と連れ立って伊部に出かけ、お金をすべて備前焼に注ぎ込んで帰ってきていたんです。そういう父を羨ましく思う半面、横では母親が怖い顔をして睨んでる(笑)。子ども心に、僕が備前焼を作ったら、(父が)少しでも買わなくなるだろうと思ったわけです。それが陶芸家の道に進んだきっかけですね」

進学した備前高校(現・備前緑陽高校)窯業科では、浦上善次、松田崋山、木南知加選といった錚々たる顔ぶれの陶芸家が教鞭をふるっていた。思えば贅沢なことだが、彼らからロクロや手びねりの手ほどきを受け、夏休みには窯焚きの手伝いにも行かせてもらった。

「土の作り方、窯の焚き方、いろんな技術を盗ませてもらいましたね。すべてが興味津々でした」

備前焼の陶芸体験ができる「備前焼ギャラリー若宮」

備前焼の陶芸体験ができる「備前焼ギャラリー若宮」

高校卒業後は、窯を築く資金を貯めるために品川白煉瓦株式会社に就職。10年後に退職するが、その間、自宅に小さな窯を築いた。その後、備前陶芸センターでも学び、昭和54年の卒業を機に、本格的に陶芸家として独立した。当時は第二の備前焼ブームで、窯焚きをしたら1カ月で全ての作品が売れたという。そんな多忙なさなかでも、太田さんは“青備前”など、さまざまな技法に挑戦した。

「“人のやらないこと”に挑戦したかったんですよ。青備前の場合は、備前焼にはない色を出して、みんなをアッと言わせたかった。象嵌にも取り組みました。備前焼の象嵌なんてあまり見ないでしょう?」

では、太田さんにとって備前焼の魅力とは?

「工程のすべてを自分の思い通りにできる点ですね。自分で土を掘り、自分でロクロをひき、自分で窯を焚き、自分で販売まで手掛ける。ただ、僕の若いころと現在の大きな違いは土を販売する業者ができたこと。今は土を買って来ればすぐにロクロがひけるでしょ。でも、そんなの面白くないと僕は思うんです。備前焼の醍醐味は土の面白さなんですよ。土を自分で作らないと面白さが半減します。僕なんか若い頃は、いい土があったらすぐに掘れるように、車にいつもバケツとスコップを積んでいたものです。この土を使ったらどんな焼きが出るだろうと想像するたけでわくわくする。自分で土を作って、薪で焚く。それが真の陶芸家ですね。そういう人がいるから備前焼は素敵なんですよ」

去年、岡山県勝田郡勝央町から備前焼に適した土が大量に出てきて、寒風陶芸の里の作家たちの間でも話題になった。これからの10年間は、その土を使って備前焼の魅力を伝えて行くつもりだという。

「それが僕の最後の使命だと思っています。おもしろい10年になりそうです」。

 

7個目の窯の前で ●近々のスケジュール
2月4日から2月12日まで東京ドームで開催される「テーブルウェア・フェスティバル2012」において作品を展示即売。

●プロフィル
太田富夫(おおた・とみお)
昭和24年、邑久町大富生まれ。
昭和51年、若宮窯築窯。
昭和54年、岡山県陶芸センター卒業。
昭和55~62年、岡山県美術展覧会連続入選。
平成10年、牛窓町寒風に「ギャラリー若宮」を建てる。
平成15年、備芸会展岡山県知事賞受賞。
平成18年、牛窓寒風に新窯築窯。 同年、備芸会展天満屋賞受賞。
平成19年、伝統工芸士認定。 同年、備芸会展天満屋賞受賞。
平成20年、備前焼伝統工芸士認定記念展。

  • 貸し切り登り窯のご案内
  • 貸し切り登り窯のご案内
  • 営業時間など総合的なご案内
  • 周辺地図と交通のご案内
  • スタッフブログ
  • 陶芸の里の陶芸家一覧(地図もあり)
  • リンク集